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私は今日も『ごみ』を川に捨てた。
じゃぽん・・・と重たく恨めしそうな音を立てて、『ごみ』は沈んでいった。
ああ、手が汚れてしまったな。早く洗って綺麗にしないと。
「ご苦労様。今日もありがとうね。」
りん、と鈴の鳴るような声。
姫石さん。私の王女様。私の女神様。
月の光を浴びて、一層その姿は美しく。
「ううん・・・私がしたくてしてることだから。」
優しく撫でてくれる、白魚のような手。
「うふふ、良い子、良い子・・・明日も、お願いね?」
赤い唇が、私のおでこに触れて甘い響きをのこしてはなれる。
『ごみ』の始末で赤く汚れてしまった私に触れても、姫石さんは全然汚れない。
きっと、彼女は年もとらないのだろうな。
少し前に読んだ本。ええと・・・なんとかのハコ。
それで見た、「天人五衰」という言葉。
天界の天人も、垢で汚れ花鬘が萎れ体が臭くなり腋の下から汗が流れて、醜くなって死んでゆくのだそうだ。
でも、姫石さんにはそんなものない。
永遠の少女。永遠の乙女。永遠の女王。永遠の女神。
天人に五衰が訪れ凡俗が老い皆醜く萎れて死んで腐っていくのを傍目に、姫石さんは美しく咲く。
私の高嶺の花。石楠花。
永遠の花。裁きの天使。
私の、神様。
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