1人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーー
『──────番線に上り列車が─────ます─────』
真っ黒なコートに包まって、私は電車のホームに立っていた。
どこか機械的なアナウンスをぼんやり聴く。
前にいるのは、女。 下品に露出した─────
電車の走ってくる音。線路に差し込む光。鉄の塊の近づく気配。
私は、ふらりと一歩を踏み出す。通り過ぎるふりをして。
そして、目の前の女を、『罪人』を思いっきり。
押した。
重いものがぶつかる音。肉の砕ける音。赤い液体の飛び散る音。
悲鳴。悲鳴。悲鳴。
ああ、線路にばらばらに分裂して横たわるその姿は、
ああ、醜いなかみを飛び散らせて汚すその姿は。
あなたが姫石さんの机にしていたような落書きのようで。
「醜い・・・」
早く、姫石さんのところへ帰ろう。
きっと─────上手に『掃除』ができた私を。
褒めて、くれるから。
最初のコメントを投稿しよう!