1人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーー
「警部。取り調べ終わりました」
若い警官が、疲れと年季を滲ませる初老の男に声をかける。
ああ、と返事をして、警部と呼ばれた初老の男は黒い珈琲の缶から口を離す。
そして、深いため息をついた。
「まさか、あんな少女が連続殺人事件の犯人とはなあ・・・」
取調室の椅子に座っているのは、地味で大人しそうな少女。
人どころか、虫も殺せなさそうな佇まい。
その少女が、数多の人間───多くは同校の女生徒───を殺してバラバラにして捨てたのだから。
警部の驚きも最もだろう。
「この前の、女の子が電車に轢かれた事件あったでしょう。あれもあの子が下手人で間違いないかと」
ちら、と怪物を見る目で少女を見る若い警官。
当の少女は、花の咲くような微笑を浮かべている。
「ね、刑事さん」
微笑を、うかべた少女はこちらに向かって語り掛けてくる。
ひっ、と若い警官の悲鳴。情けない奴め。だが無理もないだろう。
「私─────私。上手く裁けたんです。私の神様のために。私の女王様の為に」
「姫石さんの為に・・・」
少女は恍惚とした笑みを隣に向けた。
「あのなあ。お嬢ちゃんよ。」
この事実を、少女に伝えてしまうのは残酷かもしれない。
しかし、伝えなければ少女は繰り返すだろう。
歪みに歪み切った憧憬と恋心をギロチンにした『断罪』を。
最初のコメントを投稿しよう!