Cat has nine lives.

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 私は美優に嘘をついている。  『学校の裏山には決して立ち入らないこと』という暗黙のルールとしてあるそれを、私は入学してものの四か月で見事に破った。  だって立ち入り禁止という張り紙があるわけでも、直接誰かにそうだと言われたわけでもない。上級生たちから言外にそうと伝えられているだけで、実のところ本当にそれが禁止されているわけではないのだから、べつに入ったって構わないはずだった。  美優の言う通り、私が気にならないはずがなかったのだ。だから私は私の好奇心の赴くがまま、裏山立ち入り禁止の理由を探しに向かった。  二年前の夏、ちょうど今のような時期だった。じりじりと肌を焼く日差しと、それと相反するような肌寒さをよく覚えている。  校舎の裏の柵を越えて裏山へと差し掛かると、鬱蒼と茂った草木に出迎えられる。ナップサックに詰めていた学校指定のジャージに着替え、手には軍手を嵌めて、私は意気揚々と腰まで伸びた雑草の中へと飛び込んだ。  その日は裏山探索二度目の決行日だった。一度目の決行は先客の姿を目撃して断念したのだ。部活終わりだったらしく、大きなスポーツバックを下げた少年が数人ほど裏山へと入っていき、ものの数分で戻ってきた。虫が、雑草が、と文句をたれながら出てきたので、こっそりと彼らを観察していた私は二度目の決行に向けて入念な対策を練ってきたのだった。  前日まで降っていた雨で足元は少しぬかるんでいたのが印象に残っている。一歩一歩を確かめるように進み、両手で草をかき分けて道を開いていく。  裏山へと足を踏み入れた瞬間から、聳え立つ木々の葉に邪魔をされて日光が届かず辺りは薄暗い。影っているせいか、空気にはひんやりとした冷たさがあった。  雑草をかき分けていくとすぐに開けた場所に出た。そこからどの方向へ行こうかと迷っていると、すぐに道なき道を発見する。舗装されているわけでもなければ、きれいに整備されているでもない。しかし確かに道だと思えるほどに、誰かが長年踏みしめてきた跡があった。
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