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誰が通ったんだろう。
この先には何があるんだろう。
私の好奇心が興味津々に首をもたげる。不意に幼い日に父が語った言葉が脳裏を過ぎたけれど、私の目の前に転がっている『わからないこと』を解明するまでは絶対に帰らないとまで思ったものだ。
とはいえ、本音を言えば裏山に入ったところで『裏山に決して立ち入らないこと』の理由なんてわからないだろうとその時の私は考えていた。
ただそういう伝統みたいなものが残っているだけで、大した理由などないのだと予想していたから、裏山に入ったところで何も見つかるはずがないと高を括っていた。
裏山にはなにもない、ということが分かればそれで御の字だと思っていたのだ。
道なき道を歩き進めて、どれくらいの時間が経ったのか。かなり長い時間を歩いていたように思うけれど、時計を持っていなかったので正確な時間は分からなかった。
私は、そろそろ戻ろうかと考え始めていた。これ以上進むと迷子になりそうだという気持ちもあったし、なにより家を出る前に軍手を探して家中をゴソゴソと探し回る私を胡乱気な目で見つめて、
『また何か良からぬことを考えてるんじゃないでしょうね』
と問い詰めてくる母をなんとか誤魔化して出てきたから、日が暮れる前までには絶対に家に帰らなければならない。
どこかのタイミングで引き返そう、と考えていると、唐突に道なき道の終わりがきた。川に突き当たったのだ。
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