Cat has nine lives.

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 水の音が聞こえるとは思っていたけれど、まさかこんなに近くまできていたなんてと驚いていた私は、川の対岸に祠を見つけて立ち止まる。  小さな祠だった。あちこち崩れかかっていて、年季の入った木材の表面には苔も生えている。いつからそこに在るのかも分からないような、古い小さな祠だ。  これだ、と思った。これが私たち生徒間で実しやかに囁かれている裏山立ち入り禁止令の理由だ。  山の中にぽつんと残された崩れかかった祠を気味悪がって誰かがそんなことを言い始めたんだろう。もしかしたら呪われると思ったのかもしれない。口頭で伝わるうちに、いつしか理由は忘れられていったのだ。  なるほど、と思い、私は満足した。望む答えが最良の形で得られたのだ。これにて撤退もやぶさかではない。  しかし同時に、さらに興味が惹かれたのも事実だった。あの祠には何が祀ってあるのだろう、と。  近くまで寄ってみたからといってそれが分かるわけでもない。しかし間近で見てみたいという欲求がむくむくと湧き上がってきていた。  川には当然ながら橋は架かっていない。そこまで深くはなさそうだが、足元だけを濡らすくらいで済む程度の深さではなさそうだった。この川を渡るのなら、ずぶ濡れになる覚悟も必要かとしばし熟考する。  考えていたのは一瞬で、好奇心に突き動かされて生きてきた私はすぐに行動に移した。周辺を見渡し、川辺から少し離れた場所にあった岩へと向かう。しゃがみ込めば私の体を覆い隠すほどの大きさがあり、荷物置き場にはちょうどよかった。  岩に背を預けて座り込み、まずはナップサックから水筒を取り出して水分補給をする。山の中は肌寒いくらいだったけれど、休みなく歩き続けていると体は蒸したようにじんわりと熱くなっていた。  落ち着いたところで草木をかき分けて汚れ切ったジャージの上下を脱いで、ナップサックに詰め直す。少し考えて靴も脱ぐ。靴下は履いておいた方がいいだろうと判断をした。川底に何があるとも知れない。
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