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「ちょっと、コレ。なんなん?」
翌朝。
教室に入るや否や、友人達への挨拶もそこそこに、既に席についていた長屋のもとへと一直線に向かった英恵は、彼女の目の前にスマホを突きつけた。
ヒュッと息をのむ彼女は、英恵の勢いに圧倒されたからではない。
画面に表示されている文面を見て恐怖でかたまっているのだ。
「やめてっ!」
強張った声を出すと同時に、スマホを持つ英恵の手を叩いた。
滑り落ちた無機質な塊はそのまま床に直撃し鈍い音を奏でた。
幸いケースに守られているので、破損は免れたものの、普段、殆ど関わり合いのない二人がもめていることで、室内にいたクラスメイト達の注目が集まる。
慌てて椅子から立ち上がり、床に落ちたスマホを拾い上げたのは、長屋と同じグループの大橋八千代。
いまどき珍しく、おさげに眼鏡といった真面目を絵にかいたようなスタイルを貫いている彼女は、おそるおそるといった感じで英恵にスマホを返した。
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