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「ちょっと留美。なんで三野山さんが怒っているのよ……」
気が弱く、争いごとが苦手な彼女が、長屋の制服の裾を引っ張り小さく耳打ちする。
「怒ってるっつーか、ムカついてんの。これ見てよ」
手早くスマホを操作して、CROSSの画面に切り替える英恵の手を長屋が咄嗟に押さえた。
「やめてってば!」
「うっさい」
焦る長屋をピシャリと跳ねのけた英恵は、スマホを掲げると、教室中に響き渡るほどの大きな声を出した。
「アンタが送ってきたものを見せるだけなんだからいいでしょ?」
「ヤッチには関係ないことじゃないっ」
「はぁ? 夜中にこんなくだらないことで起こされたこっちの身になれよっ」
グループどころか、見た目も性格も正反対な二人の小競り合いに割って入ったのは、英恵の彼氏・伊瀬知康太だった。
「はいはいそこまで~」
緊張感の欠片もない、のんびりとした声を出す彼に手首を持たれた英恵は、「ちょっと。コータには関係ないでしょ」と頬を膨らませる。
「ふーん、なになに……」
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