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本当は声をかけるつもりなんて全然なかった。ここに寄るつもりも全然なかった。ただ何となく足が向かってしまったから、ちょっと顔見て帰ろうと思った。でも楽しそうに話してる姿と、こっちに小走りしてくる玲音の姿を見たら口が勝手に言葉を吐き出していた。
だから、本当にこんなことを言うつもりはなかったんだ。
「あんまり他の男と仲良くすんなよ」
それを聞いた瞬間、玲音の表情は強ばった。そして顔を歪めたまま視線を逸らし、ぎゅっと口を結んだ。
嫌な空気が俺たちの周りを包み込むと同時に玲音がぼそりと声を漏らす。
「そういうのウザい」
「ウザッ!?」
「だって、別に普通に部活動してるだけじゃない。何でそんなこと言われなきゃならないの?」
半分泣きそうな顔をして玲音は言う。
「だから……!」
何とか言葉をつなげようと頭をフル回転させるが、それよりも玲音の方が早く、再度口を開いた。
「私はナオヤが他の子と遊びに行ったっていいと思ってるよ」
まるで鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。俺は小さく聞き返すことしか出来ずに玲音を見つめる。
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