第2話|小説を書くって奥が深かった

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「わざと自分とは反対の考えを想像するだけで視野が広がることもあるし、そういう人と出会った時にも対応できるしね」 「さすが演技の先生ね。だから役作りの幅が広がって、それが小説に活かせるんだわ」 「そう言ってもらえると嬉しいけど。あんまり自分とかけ離れちゃうと、なかなか先に進めないっていう弱点もあるんだよね」 「しかも有羽の場合は『好きな人たちのいいところを伝えたい』っていうのがあるから、今回は余計に書けないってなったんじゃないかしら?」 「それだ!付き合うにしても、主人公のいいところがなかなかうまく表現できなくて。それにこのタイプにどう肝心なことに気付かせるか?って考えたらめんどくさくなった。第一、本人が浮気するのやめようって思わない限り意味ないよね」  そうか。やめようと思わないからやめないのか。きっとあいつもそうなんだ。ホントにもう。  私はこの小説の主人公と自分の彼氏を重ね、一人深いため息をついた。 「ねえ有羽。この主人公、シュウに似てるよね?シュウをイメージして書いたの?」 「え?あー、似てるっちゃ似てるけど。ピンクボーイな部分でしょ?」 「ピンクボーイ……確かに谷山くんにはその表現が一番しっくりくるわね」  私の彼──谷山柊一(たにやましゅういち)を知っている彩ちゃんはくすくすと笑った。知り合ってからまだそんなに日が経ってないというのにエロいイメージがピッタリと言われてしまう彼。どうかしてるわ。 「でもシュウじゃないよ。シュウの方が酷いもん」  そして親友にまで言われるこの始末。ホント、どうかしてるわ。
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