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目が覚めると、雨は止んでいた。
いつの間にか眠ってしまったようだ。
やっと晴れた空を見て、僕は久しぶりにあの家に向かった。
いつもの道を通り、緩い下り坂に差し掛かる。
あの家が見える……筈だった。
何も無いその場所は、あの人の家があった場所。
そこには家は無く、大きな機械が壊した何かわからない瓦礫の山。
なぜ家が無いのか、何があったのか、僕は理解出来ずにいた。
家のあった場所を見ていると、誰かが話し掛けてきた。
「あなたもこの家が好きだったの?」
そのお婆さんは少し寂しそうに僕に話し掛けた。
「この家はもう何年も空き家だったの。でも壊したくなかった。思い出が詰まった、大好きな家だったから」
そう言うと、悲しそうな笑顔で
「でも駄目ね、ボロボロのままじゃ家が可哀想。だからごめんね」
そう言って、その人は去って行った。
その手にはあのノートが大切に抱えられていた。
あの人の手元にいつもあった、あのノート。
風にさらされて、少し剥がれかけた表紙には文字が書いてあった。
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