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遺書
ただいまの時刻は午前六時。いよいよ最期の時がやって参りました。
この期に及んで未練がましいようですが、私にも言いたいことはあります。伝えたいことがあります。どこから書いたら良いものか迷うけれど、とにかく思うままを書くしかありません。
私の望みは、ごく普通に生きることでした。
こう書くと、この文章を読んだ方は不思議に思うかもしれません。
私としても自分の人生がこのような形で終わるとは、夢想だにしていなかった。自分があんな過ちを犯すとは考えもしていなかったことです。嘘だと思うかもしれませんが、本当です。私はごく平凡な幸せを手に入れたかった。
普通の会社、中小企業で構わない、平々凡々とした地元の会社に就職し、二十代半ばから後半くらいで、同世代の女性と恋をして、結婚をし、子育てをしたかった。子どもに会いたかった。私は、私の子どもを育てたかった。愛したかった。抱きしめたかった。変な意味ではありません。純粋に、言葉通りの意味です。
大金持ちになりたかったわけではありません。
たくさんの女性にもてたいとか思ったわけでもありません。
私は普通の、ごく小さな幸せを望む人間に過ぎなかった。
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