遺書

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 私にも悪いところはあった。学生の女の子のすぐ背後に近づいて、妄想に浸るなど、確かに変質者である。だからと言って、ここまで悪し様に罵られるとは思いもしなかったことでした。  お嬢様学校の女子生徒が、それはもう可憐な美少女が、吐き捨てるように、邪魔だと私を罵った。  私の心は煮えくり返りました。ひとつは美少女が自分の想像していたそれとまったく異なる言葉遣いをしたことによる失望、そしておじさんと呼ばれたことへの怒り。私は怒った。悲しんだ。泣いた。一回り以上も年下の少女から、お前はもはや違う世界の人間だと宣告されたように思いました。おじさん呼ばわりされたことがそれほど私にとっては衝撃だったのです。  それと、これは今になって冷静に思い返してみれば私の空耳であったかもしれないが、彼女は私を罵った直後、舌打ちをしたのです。  これが、私の怒りの炎に油を注いだ。  この小娘、よくもここまで俺を馬鹿にしてくれた。世間からつまはじきにされた自分だが、こんな子どもにまで邪魔者扱いされるとは思いもしなかった。     
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