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彼女の両親に同情する気は起きませんでした。あんな、年上の人を馬鹿にするような女を育てた人間二人ですから、どうせくだらぬ人間でしょう。しかし渡辺春香を育てるのに時間と金は存分にかかったでしょうから、それをこの世から損失させたというのは少し申し訳なく思う。
この文章は彼女の両親も読むだろうけれど、ご両親さんへ伝えておきます。私が彼女を殺害した理由とその後の気持ちについては以上の通りです。私の部屋のベッドの下には貯金箱が有り、これは買い物の度に発生した小銭を貯めたもので二万円くらいは恐らくあると思うので、もし良かったら私の両親からそれを貰ってください。
それにしても私は、後悔はしていないけれど、だけどこれ以上生きても仕方無いとつくづく感じ入るのです。
思えばつまらん人生を送ってきたものです。それが更に、あんな突然の事件で人間一人を殺めてしまった。
渡辺春香が私を侮辱したように、これからも私は他人に侮辱されるでしょう。その度に発生する怒りと恨みを己の中に押し込めたまま生きることはできそうもないし、また俗っぽいようでありますが、もしかしたら私は刑務所に入ることになるかもしれん。それはとても耐えられそうにないので、私は死を選びます。だって、もはや死ぬしかないではないですか。
怒り、恨み、無念、諦め。
色々とあるけれど私のこれまでの人生で感じてきた感情と、この度の事件の顛末を記して、私はこれより世を去ります。さようなら。
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