遺書

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 しかし私にはそれができませんでした。  私はとにかく要領が悪かった。  学校の勉強はそこそこ出来たけれど、場の空気を読むとか、他人の気持ちを考えるということがとにかく苦手で、私も考えたり反省したりはしたけれど、それが実を結ばず、とにかく人間関係が不器用でありました。  人に意見を言うのが苦手で、自分を主張するのが不得意で、しかしこのままではいけないと思い、自分の意見を主張します。しかし私が自分の意見を主張するのは、たいてい場のみんなの意見が決まったぞ、という段階なのです。 「そういう意見があるなら、もっと早く言ってくれ」  と、人は言いました。  もっともなことです。私はいつも言うタイミングが悪かった。  だから私は反省した。それでは今度は早めに意見を言う。  ですが今度は早すぎました。まだ皆がまともに意見を出していない段階で主張する。 「お前、ちょっと黙っていろ」  と、今度はそのように言われてしまいました。 「自分のことばかりペラペラしゃべるやつ」  とも言われました。  そんなつもりは一切ないのです。  まったくの誤解です。  私は常に自分を抑えていました。  ですが、そのことがうまく人には伝わらない。     
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