遺書

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 とにかく間が悪いのでしょう。私は悲しかった。どうしてこう、自己主張の仕方が下手糞なのか。自分がとことん嫌になり、やがて私のむっつり癖は、反省からではなく、自分自身の性格となっていったのです。  なにを言っても解ってはもらえまい、なにを言ってもなにも言わなくても、どうせ万事反発を食らうだけなのだ、人から嫌われるだけなのだと思うと、私は自分をどんどん出さなくなっていったのです。  このような私が社会に出てうまくいくはずもありません。  社会に出て一年目は、適度に愛想笑いをして、言われたことだけをしていればなんとかなった。  ですが二年目からはそうもいきません。私のように自己主張が下手で、議論や会議が向かない人間に、会社員が勤まるはずもなく、やがて私は休職し、最終的には退職しました。  月日は流れ、私も三十歳を超え、もう二度と会社員になりたくない、と思うようになっていきました。  退職をしてから数年が経過し、会社員時代のカンが完全に鈍ったことがひとつ。そしてまたこの頃には(不思議なことに退職直後よりも)会社員時代のトラウマが頻繁に蘇るようになってきていたのです。  会社員のころ、 「結果を出せ」 「結果を出せ」  と、耳にタコができるほど言われました。  それは会社員でありますから当然の要求なのですが、しかし結果を出してもなお評価されないのが、社会人にはよくあることです。     
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