遺書

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 ああ、でもそうか、私は考えてみれば家族の墓に入られるかどうかも解りませんね。あれだけのことをしでかした人間が、人並みに墓に入ることができるでしょうか。  しかし意地が良い人間でも、普通の人であれば、私と同じ墓に入ることを拒否するでしょう。それだけのことを私はしでかした。  既にご承知のことでしょうが、二ヶ月ほど前に起きた渡辺春香の事件、あれは私の仕業です。  なぜ私があんな罪を犯してしまったのかその動機について、これより順を追って書いていきます。  三ヶ月前、私は世間への怒りを常に胸に抱き、鬱屈した毎日を送っていました。  楽しみと言えば近所のラーメン屋でたまに食事をすることと、レンタルビデオ屋でアダルトDVDを借りて観ることくらいでした。    食欲と性欲を満たすことだけが、友人もおらず、収入もない私の数少ないストレス発散の手段だったわけです。  そのうち私は街を歩いていても、制服姿の少女にふと目が行くことが多くなりました。  あの少女はどんな生活を送っているのだろう、どんな夢をもっているのだろう、どんな恋をしているのだろう、いろんなことが気になるようになりました。  そこには若さへの嫉妬と、おのれ自身の性欲があるわけで、極めて複雑な劣情が私の中に生まれていたわけです。  あの少女もやがては誰かと恋をして、性を経験して、大人になっていく。     
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