始まりの日

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2階からなかなか降りてこないパパを起こそうと、寝室のドアを開けた私の目の前には、プランとぶら下がった二本の脚。 訳が分からない光景に首をかしげたが、足元に横たわっている椅子に目をやる頃には、頭がガンガン、心臓がごうごうと音を立てて「死」が危険信号を送ってくるのが分かる 次の瞬間「いやっ、きイヤぁぁー」声になっているか分からない奇声をあげて走り出した私は、空中に浮いている脚に強く抱き着いた。 私が抱き着いた重みに「ううぇ、ううっえ」と死んだと思った旦那は声をあげた。 「生きてる!!あっ、あっ、あっ、どうやって降ろせば・・」とおろおろしながらも、倒れた椅子を戻し、ゆっくりと旦那の脚をその上に乗せることが思ったよりスムーズにできた。 両脚が椅子につくと彼は倒れるようにドスっと床に落ちた旦那は俯いたまま動かない。 動かない彼をしばらく見つめた後「何、何があったの?どうしてこんな・・」と優しく話しかけたが、俯いたまま肩で大きく息をするだけで、こちらを見ようとはしない。 「家建てたばかりなのに、聡だってまだ小さいのに、こんなことして何なの!」自分の声が少しずつ大きくなるのが分かるが止められない。 「これはハンモック用の金具よ!死ぬための紐を掛けるように作ったんじゃないわ!ハンモックは私の夢だったのに!」 「聡(さとし)のことは?父親なし子にするつもりだったの?そんなことして心が痛まないの!」自分でも何を口走っているのか分からないまま、怒りに任せて彼を攻め続けた。 「俺は・・」
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