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それから三年の月日が流れた。
武史が死んだ事実も、確実に受け止めきれる事はまだないけれど心の整理は出来るようになってきた。
もうすぐ武史の三周忌だ。
また辛い事を思い出す日が近づいてきた。
そんな時、携帯電話が鳴った。武史の母からだった。
「武史の三周忌は来られる?見せたい物があるのよ。」
「はい。行きます。見せたいもの・・ですか?」
「そう。明美さんが来てからお話するわね。法要の前に、一度家に来て頂ける?」
「はい。わかりました。」
そう言い終わると挨拶もそこそこに電話は切れた。
見せたい物・・
何か思い出の品でも見つかったのだろう、と思い気になったが私は途中で手を止めていた家事を再開した。
三周忌の日。
明美は喪服に着替えて武史の自宅に行った。
「いらっしゃい、明美さん。待っていたのよ。」
武史の母が出迎えてくれた。家の中に入ると、三年前とあまり様子は変わっていないように思えた。
「こんにちは。ご無沙汰しています。あまり連絡もせず、すみません。」
「いいのよ。こうやってまた会えて私も嬉しいわ。」
仏壇の前に座り線香を上げる。
そしてリビングに行き、武史の母と二人でソファーに腰掛けた。
「電話で話していた事なんだけど・・どうしても見せたい物があって。明美さんには早めに来て頂いて申し訳なかったわね。」
「いえ、大丈夫です。」
武史の母は、おもむろに立ち上がり戸棚から英語の文字が沢山書かれた大きめの箱を出し、明美の前に差し出した。菓子が入っていた箱のようだった。
「こんな箱で悪いわね。ちょうどいいサイズの物が無くって。・・開けてみてくれる?」
「はい。では、失礼します。」
明美は箱を開けてみる。
すると、中からは、手紙らしきものや手帳、写真などがぎっしり入っていた。
「これ・・は・・?」
「武史とあなたの思い出の品々よ。これね、武史の遺品を整理したら出てきた物なの。私、武史の死をなかなか受け止めきれなかったから、あの子の部屋は手つかずの状態でね。だけど、このままじゃ駄目だなって思って、明美さんに電話する二日くらい前に武史の部屋を整理したのよ。・・そしたら、あの子のデスクの引き出しの中にこんなに沢山あって。あなたの事が本当に大切だったのね。」
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