1人が本棚に入れています
本棚に追加
「遅くなってごめんなさいね。お茶っ葉切れてたからコーヒー淹れてたの。・・・あれ?明美さん、どうしたの?顔色真っ青よ。」
「・・いえ、何も無いです・・。」
コーヒーを飲んでいる間も、武史の母が話しかけてくれる間も、私はさっき見た写真の男の事や夢の中の言葉が頭から離れなくなり上の空になっていた。
「明美さん、あなた・・大丈夫?さっきから様子が変よ?」
「いえ・・大丈夫です。すみません・・。」
それから、法要の為に二人でお寺に向かい武史の親族に挨拶をしたり会話を交わしたりした。
それでも考える事は、今日、私が死ぬかもしれないということだけだった。
駄目だ・・こんなんじゃ、武史に失礼だ。ちゃんとしなきゃ!
そう思えば思うほど、私は今日死ぬのか、あの男は誰だったのかが気になって仕方がない。
お坊様のお経の間も、焼香の間も、武史の姿を考える事は出来なかった。
そして場所を変え墓参りに行き、手を合わせる。
武史の母が明美の隣でふと、
「今日で三年ね・・」
と呟いた。
「そうですね・・。」
と答えるのが精一杯だった。
私、今日死ぬのかな?死んだら武史に会えるのかな・・?でも、今は生きていたいよ。
武史、私をどうか守っていて下さい。
と念を込めて武史の墓の前で手を合わせ続けた。
法要が終わり、一度武史の家に戻り、思い出の品を受け取って武史の母にお礼を言って家を後にした。
自宅までの帰り道。
私は、交差点になっている所を曲がろうとした所で猛スピードの車に後ろから追突された。
武史との思い出の品は道に散らばり、そのまま十メートル程飛ばされ、私は死んだ。
追突してきた男が車から降り、明美の側によると耳元で
「だから言ったでしょ。今日死ぬって。お前が悪いんだよ。俺に見向きもしないから。」
最初のコメントを投稿しよう!