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七夕の夜に願うこと
笹の葉と共に色とりどりの短冊が風に吹かれて揺れる度、サラサラと涼しげな音が辺りに優しく響いた。
今日は七月六日。七夕の前日だ。
この町では明日、ささやかな夏祭りが催される。
いつもはがらんとしている町の小さな広場は、既に設営が済んでいて、所狭しと出店が並んでいた。明かりがついて人が集まれば、活気にあふれた空間になるだろう。
しかし、真夜中の今、そこに人の姿はなく、辺りはシンとしている。
その広場の隣、短冊が吊るされた笹がいくつも飾ってあるのは、こぢんまりとした小さな神社だ。
僕はこの小さな神社の守り神をしている。
僕は、人の願い事を、一つずつ見て回った。
守り神と言っても人の願いを叶えることは出来ないのだが、僕は短冊に記された願い事を見るのが好きだった。
パイロットになれますように、志望校に合格できますように、家族が健康でありますように……。人の願いは様々だ。そして、そのどれもに心がこもっている。
一枚、また一枚と短冊を見ていく。
すると、鮮やかな短冊の中に一枚だけ、真っ白な短冊が吊るされているのを見付けた。
気になって手を伸ばし、短冊を裏返す。
そこには他の短冊と同じように、誰かの願いが記してあった。
『願うことが見つかりますように』
ただそれだけが記されていた名前もない短冊が、僕は妙に気になった。
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