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恋助さんの小説の中には、
私が、言いたくても上手く言葉に出来なかった気持ちを、ぴったりの言葉で表現したセリフや、
あの時こうすればよかったんだ…と思わせるシーンが数多く登場する。
彼の小説を読んで、私は気づく。
私はあの時、こんな風に感じていたんだと。
こんな風に、行動したかったのだと。
こういう気持ちを、相手に伝えたかったのだと。
* * *
『一緒に…帰らない?』
『……』
大好きな彼に突然誘われ、私はドキドキしすぎて、うまく喋れない。
真っ赤になりながら、返事の代わりに、差し出された彼の右手をぎゅっと握ると、彼は、嬉しそうに微笑んでくれた。
* * *
「ふぅ…」
更新された最新ページまで読み終え、次に続きから読めるように《しおりを挟む》という箇所にカーソルを合わせて《決定》ボタンを押した。
寝る前にベッドの中で恋助さんの携帯小説を読むのは、もう随分前から私の日課になっている。
朝起きた時も、寝坊してよほど時間がない時を除いて、彼の小説が夜中に更新されていないか携帯を開いて確認する。
彼の携帯小説を読むことは、私の生活の一部となっているのだ。
パタンと携帯を閉じると、部屋の電気を消して、私は眠りについた。
枕元に、携帯電話を置いて……。
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