第1章

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私、広崎梨奈 (ヒロサキ リナ)は、好きな男の子と話すのが苦手だ。 他の男の子とはそれなりに話せるのに、好きな男の子の前ではいつもフリーズ(凍りつく)して、固まってしまう。 顔の表情も、体の動きも、声も、全部。 もしかすると、呼吸も少しくらい止まっているかもしれない。 唯一、頭の中の思考回路だけは動いているが、好きな男の子を前にしてどうやって接すればいいのか分からず、 早く何か喋らなければ、と思えば思うほど、頭の中がパニックになってしまう。 そして、いざ話しかけようと脳に命令を下しても、緊張しすぎて声が出てこない。 好きな人を前にすると、いつもフリーズしたまま声も出ず、動くことも出来なくなってしまうのだ。 ************ 始業式の日の朝。 張り出されたクラス発表の紙の前に、みんなが群がっていた。 私も、少し後ろから自分の名前を探す。 2-Aと書かれた紙に『広崎 梨奈』の名前を見つけた。 次に私が探した名前は、『加瀬 功太』。 加瀬功太(カセ コウタ)くん。 私の好きな人。 1年生の頃からずっと片思いしてる人。 「あ…」 あった。 2-Aの紙に、加瀬くんの名前を見つけた。 偶然にも、1年生の時も同じクラスだった加瀬くんと、また一緒になれたのだ。 思わず顔がほころぶ。 次に、親友の『森島さつき』の名前を探そうとした時、クラス発表を見ながらワイワイ騒いでいる集団の中の1人が、クルッと振り返った。 ――加瀬くんだった。
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