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ドキ、と心臓が跳ねる。
私と目が合うと、加瀬くんはニコッと微笑んでこちらに歩いて来た。
それと同時に――、私の色んな動きがピタッと止まった。
「広崎、また同じクラスだな。」
「……」
「よろしく、な。」
「……」
……な、何か話さなきゃ……。
頭の中では分かってるのに、言葉が出てこない。
「広崎?」
加瀬くんが不思議そうに、私を見つめた。
……やだ。加瀬くんに、変に思われちゃう……。
『こちらこそ、よろしくね。』ぐらい言わないと……。
ダメ…声…出ない。
緊張で、口の中がからからに渇いてくる。
私はフリーズしたまま、じっと彼を見つめた。
再び彼が口を開きかけた時、
「おーい、加瀬。今回は一緒のクラスになれたな。」
同じサッカー部の長谷部くんが声をかけてきた。
加瀬くんは、「おー」と返事をすると、
「じゃ。広崎、またな。」
と言って長谷部くんの方に駆けていった。
知らないうちに息を止めてたようで、苦しくなり「はぁー」と吐き出す。
まだ、ドキドキしてる。
加瀬くんが話しかけてくれた。
『また同じクラスだな。』て。
嬉しい。
また1年間、同じ教室で彼のことを見つめることが出来る。
私が1人で幸せに浸ってると、
「梨奈、やったね。また同じクラス。」
森島さつきに、バシッと背中を叩かれた。
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