第1章

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ドキ、と心臓が跳ねる。 私と目が合うと、加瀬くんはニコッと微笑んでこちらに歩いて来た。 それと同時に――、私の色んな動きがピタッと止まった。 「広崎、また同じクラスだな。」 「……」 「よろしく、な。」 「……」 ……な、何か話さなきゃ……。 頭の中では分かってるのに、言葉が出てこない。 「広崎?」 加瀬くんが不思議そうに、私を見つめた。 ……やだ。加瀬くんに、変に思われちゃう……。 『こちらこそ、よろしくね。』ぐらい言わないと……。 ダメ…声…出ない。 緊張で、口の中がからからに渇いてくる。 私はフリーズしたまま、じっと彼を見つめた。 再び彼が口を開きかけた時、 「おーい、加瀬。今回は一緒のクラスになれたな。」 同じサッカー部の長谷部くんが声をかけてきた。 加瀬くんは、「おー」と返事をすると、 「じゃ。広崎、またな。」 と言って長谷部くんの方に駆けていった。 知らないうちに息を止めてたようで、苦しくなり「はぁー」と吐き出す。 まだ、ドキドキしてる。 加瀬くんが話しかけてくれた。 『また同じクラスだな。』て。 嬉しい。 また1年間、同じ教室で彼のことを見つめることが出来る。 私が1人で幸せに浸ってると、 「梨奈、やったね。また同じクラス。」 森島さつきに、バシッと背中を叩かれた。
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