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ヘコんでいる私の背中を、さつきはバシッと叩いた。
「梨奈。いつまでフリーズしてるの。」
「うん……」
「せっかくまた、加瀬くんと同じクラスになれたんじゃない。
フリーズしてる場合じゃないでしょ。」
「分かってる。」
「私が同じクラスなのは知らなかったのに、梨奈と同じクラスになったのは、知ってたんでしょ。
少なくとも私より、興味持ってくれてるってことなんだから。」
「……うん、ありがと。」
でもたぶん、それは……。
長谷部くんの名前の下に、私の名前が書いてあったから。
五十音順に並んでいるので、「ハ」から始まる長谷部くんと「ヒ」から始まる私は、同じ出席番号らしく、
長谷部くんと私の名前は上下に書かれていた。
加瀬くんは、長谷部くんの名前を探した時に、偶然私の名前を見つけたのだろう。
私はもう一度、そっと加瀬くんの後ろ姿を見た。
それでも…偶然でも、嬉しかった。
私は、この偶然を大事にしたい。
恋助さんの小説の登場人物の様に、
いつか私も自分の気持ちを加瀬くんに伝えたい……。
神様がくれた偶然に、私は期待せずにいられなかった。
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