第1章

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ヘコんでいる私の背中を、さつきはバシッと叩いた。 「梨奈。いつまでフリーズしてるの。」 「うん……」 「せっかくまた、加瀬くんと同じクラスになれたんじゃない。 フリーズしてる場合じゃないでしょ。」 「分かってる。」 「私が同じクラスなのは知らなかったのに、梨奈と同じクラスになったのは、知ってたんでしょ。 少なくとも私より、興味持ってくれてるってことなんだから。」 「……うん、ありがと。」 でもたぶん、それは……。 長谷部くんの名前の下に、私の名前が書いてあったから。 五十音順に並んでいるので、「ハ」から始まる長谷部くんと「ヒ」から始まる私は、同じ出席番号らしく、 長谷部くんと私の名前は上下に書かれていた。 加瀬くんは、長谷部くんの名前を探した時に、偶然私の名前を見つけたのだろう。 私はもう一度、そっと加瀬くんの後ろ姿を見た。 それでも…偶然でも、嬉しかった。 私は、この偶然を大事にしたい。 恋助さんの小説の登場人物の様に、 いつか私も自分の気持ちを加瀬くんに伝えたい……。 神様がくれた偶然に、私は期待せずにいられなかった。
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