第1章

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家に帰って制服を着替えてから、携帯を開いて恋助さんの小説の更新状況を確認する。 今日はまだ、更新されていないようだった。 しおりを開いて、昨日の夜にも読んだページをもう一度読んでみる。 「いいなあ……」 思わず、ポツリと呟く。 小説の主人公の女の子が、大好きな彼を前にして緊張から上手く喋れなくなるシーン。 彼女の気持ち……私には分かりすぎるくらい分かる。 少し状況は違うけれど、私も今日主人公の女の子と同じ様に、大好きな彼に話しかけられ、緊張して何も話せなくなってしまった。 だけど、彼女は私とは違う。 彼女は勇気を出して、一歩前に踏み出した。 差し出された手を握って、 言葉ではなく行動で、 ちゃんと彼に、気持ちを伝えた。 フリーズして固まったまま、何も出来なかった私とは違う。 「コメント…書いてみようかな…」 ふと、そんな風に思った。 恋助さんのファンは、たくさんいる。 小説を読んでの感想やコメントが、毎日多くのファンから寄せられている。 その数は余りにも多くて、 『とても全員に返事を返すことは出来ないけれど、読者の方からの声は、いつも楽しみに読んでいます』 という恋助さんのコメントを、以前読んだことがあった。
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