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「おはよー。」
「あ、梨奈、おはよー。」
教室に入ると、先に来ていたさつきが私の席へ歩いて来る。
隣りで長谷部くんと話していた加瀬くんが、顔を上げてこっちを見た。
……言わなきゃ…「おはよう」て……。
たった4文字なのに、なかなか声が出ない。
「ん、コホッ」
軽く咳払いしてから覚悟を決めて、私はスウと息を吸い込んだ。
「お、おは…」
「遅いじゃん。」
加瀬くんが私の声を遮って言った。
「…え…」
何のことを言っているのか分からずキョトンとした私に、さつきが助け舟を出してくれる。
「そう?梨奈、いつもこのくらいの時間だよね?」
「うん。」
「でも、今日は早く来てたみたいだったから。」
「え、そうなの?」
さつきが、クルッとこっちを向いた。
「あ、うん、そうなの。1本早い電車で来たから。」
「加瀬、何でそんな事知ってんの?」
何気なく、長谷部くんが聞いた。
「それはさ…」
加瀬くんが言いかけて、ちょっとイタズラな顔に変わる。
「俺と広崎の秘密。な?」
加瀬くんが、少し首を傾けて目で合図してきた。
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