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全然秘密にするような事じゃないのに、そんな風に言われたら、
2人だけで何かを共有しているようで嬉しくなる。
けれども嬉しさと同時に、加瀬くんに話しかけられて私はまたフリーズしてしまった。
カチカチに固まっているのに、体中が熱を帯びていて心臓がバクバクと音を立てている。
何とかコクンと頷くと長谷部くんが、
「何だよ。教えろよ。」
と、加瀬くんのお腹にパンチする真似をした。
「いいだろ、別に。」
「お前はっ。俺は、そんな風に育てた覚えはないぞっ。」
「俺も育てられた覚え、ないし。」
加瀬くんと長谷部くんのじゃれ合う声が、ぼんやりと遠くの方で聞こえる。
『俺と広崎の秘密。』
加瀬くんの言葉が、頭の中で何度も再生される。
「ちょっと、梨奈。」
腕を引っ張られて、さつきの席に移動すると、私はさっき吸い込んだ息を「はぁー」と吐き出した。
「梨奈、恐いよ…顔が。」
「えっ?」
「フリーズしてるのに、口角だけ微妙にキュッと上がってて……。
笑うのなら、しっかり笑ってよ。」
「……」
……今、私…加瀬くんの前で、そんな、ほくそ笑むような顔して……。
さつきの指摘によって、私は幸せの絶頂から突き落とされ後悔の念でいっぱいになった。
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