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……まだ早いし、どうしようかな。
いつもより15分ほど早く着いたので、今すぐバス停に向かって歩くのは早すぎる。
少し考えて、駅を出て、少し遠回りしながらいつもの道に出ることに決めた。
カップケーキの入った手提げを、目の高さに掲げて眺めながら歩いていると、
後ろからチリンチリンと、自転車のベルの鳴る音が聞こえた。
私が振り向くと同時に、加瀬くんがキッとブレーキを鳴らして私のすぐ後ろで止まって、自転車を降りた。
心の準備が出来ていなかった私は、突然の彼の登場に、
「…か、加瀬くん?どうして…」
と、無意識に心の声を漏らした。
加瀬くんは驚いている私の様子を見て、ぷっと吹き出した。
「広崎、驚きすぎ。口、開いてるよ。」
「!」
驚いて、ポカンと開けていた口を慌てて閉じる。
「クッ、そんなに、ぎゅっと閉じなくても。目まで瞑ってるし……」
加瀬くんは、手をグーにして口に当てながら笑いを堪えている。
…うう。恥ずかしい。
恥ずかしすぎて顔を見れず下を向くと、持っていた紙袋が視界に入ってきた。
……あ…渡さなきゃ……。
「あのっ、これ……」
私は頬を赤く染めながら、勢いよく加瀬くんの前に両手で紙袋を突き出した。
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