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加瀬くんの顔が、笑い顔からキョトンとした顔に変わった。
「これ、何?」
「…あ…」
横に並んで歩きながら話すいつもの朝とは違い、向かいあって立っているせいか、私の緊張はいつもより高まり声も上手く出ない。
……返事しなきゃ…でも、声が……。
そう思って焦っていると、加瀬くんが紙袋の中を覗いて、中に入っていたメッセージカードに気づいてくれた。
「お、手作り?そっか。広崎、クッキング部だもんな。」
ドクン。
「知って…たの?」
加瀬くんが、私の入っている部活を知っていたことに驚く。
「え…あ、うん。知ってるよ、それくらい。
それに部活の時、グラウンドから家庭科室が見えるし……」
そこで加瀬くんはいったん言葉を切ってから、ちょっと照れた顔で言った。
「……赤いエプロン、してるだろ?だから…外からでもすぐ、広崎のこと見つけられた……」
「…っ…」
ドクン、ドクン。
息苦しいくらいに、ドキドキしてくる。
加瀬くんはきっと深い意味なんてなくて、赤いエプロンは目立つ、ていうことを言いたかっただけかもしれない。
でも今のって、私を探していたら赤いエプロンだったから見つけやすかった、みたいな意味にも取れるよね。
都合のいい解釈をして、勝手に照れて勝手に赤くなっていると、加瀬くんが紙袋を手に持ったまま、ゆっくりと自転車を引いて歩き出した。
私も遅れないように、慌てて加瀬くんの隣りに並んで歩いていく。
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