第3章

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加瀬くんの顔が、笑い顔からキョトンとした顔に変わった。 「これ、何?」 「…あ…」 横に並んで歩きながら話すいつもの朝とは違い、向かいあって立っているせいか、私の緊張はいつもより高まり声も上手く出ない。 ……返事しなきゃ…でも、声が……。 そう思って焦っていると、加瀬くんが紙袋の中を覗いて、中に入っていたメッセージカードに気づいてくれた。 「お、手作り?そっか。広崎、クッキング部だもんな。」 ドクン。 「知って…たの?」 加瀬くんが、私の入っている部活を知っていたことに驚く。 「え…あ、うん。知ってるよ、それくらい。 それに部活の時、グラウンドから家庭科室が見えるし……」 そこで加瀬くんはいったん言葉を切ってから、ちょっと照れた顔で言った。 「……赤いエプロン、してるだろ?だから…外からでもすぐ、広崎のこと見つけられた……」 「…っ…」 ドクン、ドクン。 息苦しいくらいに、ドキドキしてくる。 加瀬くんはきっと深い意味なんてなくて、赤いエプロンは目立つ、ていうことを言いたかっただけかもしれない。 でも今のって、私を探していたら赤いエプロンだったから見つけやすかった、みたいな意味にも取れるよね。 都合のいい解釈をして、勝手に照れて勝手に赤くなっていると、加瀬くんが紙袋を手に持ったまま、ゆっくりと自転車を引いて歩き出した。 私も遅れないように、慌てて加瀬くんの隣りに並んで歩いていく。
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