4人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※ 彩羽 8歳 拓、和也 9歳 ※※※
「ただいまー!麗子ママ!」
「あら、おかえり!いろちゃん!」
拓の家は食堂を経営している。
日中、祖母の書道教室が開かれている間、彩羽は学校が終わると、まず拓の食堂に立ち寄っていた。
「おやつあるから手洗っといで」
「はーい!」
手洗い場で手を洗い、フロアに戻るとテーブルの上に手作りのプリンが置かれていた。
ランチタイムが終わり、夕方の込み合う時間まで、少しだけ食堂が静かになる。
その間は、子ども達がおやつを食べたり、宿題をしたりすることが許されているのだ。
「拓ちゃんは?」
彩羽はプリンを頬張りながら訊ねた。
「あら?一緒じゃなかったんだね。拓なら和と野球しに行ったんじゃないかな」
拓の母親である麗子はテーブルの割り箸や調味料をチェックしながら言った。
「今日、お掃除当番だったから…」
二人に置いてきぼりをくらったと分かり、彩羽は手を止めてうつむいた。
「まだ、そんなに経ってないから、遠くには行ってないんじゃない?」
それを聞いた途端、彩羽は残りのプリンを口に押し込み椅子から立ちあがり、店のドアへ走り出した。
「気を付けるんだよ!いろちゃん!」
「はーい!いってきまーす!」
勢い良く外に飛び出した彩羽は、一目散に近所の公園へ向かった。
家から五分ほどの少し大きめの公園が、いつも子ども達のお決まりの遊び場だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!