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「……いない……」
息を切らして公園へ向かったが、そこには皆の姿はなかった。
何人か顔見知りの子に訊ねたが、今日は見かけていないと言う。
彩羽はそれを聞いて思わず泣きそうになった。
(私が拓ちゃん達を探すとわかっていながら、違う遊び場へ行ってしまうなんて…。)
他に野球の出来そうな公園が思いつかず、半べそをかきながら歩き出した時…。
「あ!そうだ!」
彩羽は、ずいぶん前に和也に連れて行ってもらった河川敷の公園の事を思い出した。
連れて行ってもらったと言うよりは、強引に付いて行ったのだが…。
しかし、ここからは少し距離があったはずだ。何せあの時は自転車で行ったし…。
彩羽は自転車を取りに戻ろうかと迷ったが、走った方が早いと思い、また駆け出した。
男の子たちは遊びに夢中になると、結構意地悪だ。
ましてや野球となると代走以外は役に立たない、彩羽はお荷物扱いなのだ。
そんな男の子達を見返してやろうと、彩羽は目一杯走った。
遅れた彩羽が、こんなに早く来るとは誰も思わないだろう。
皆の驚く顔を想像しながら彩羽は、新調した靴の痛みも忘れて走り続けた。
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