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「こっち…」 ずっと黙っていた和也が、不意に佐久の後ろに回り彩羽の手をつかみ、そのまま彩羽を外へ連れだした。 「あ、かず!待って!」 拓も慌ててその後を追った。 「これ、ハル…。しばいぬ」 和也は飼っていた柴犬を彩羽に見せ、つかんでいた手をそっとハルの背中に置いた。ハルは嬉しそうに目を細めた。彩羽は一瞬怯えて手を放そうとしたが、和也は彩羽の手を握りながら、ハルの背中を優しくなで続けた。 「きもちいいって、ハル。いろはも?」 彩羽はコクリと頷いた。 「いろちゃん、犬好きなんだね!家にもオウムいるよ!鳥は好き?」 後ろから来た拓も彩羽に言った。彩羽はまたコクコクと二回頷いた。 「ほんとに?じゃあ、あとで見に行こう!かずと三人で!ね?」 彩羽はにっこりと笑って頷いた。 その様子を見ながら佐久と志麻は、両親を失った彩羽が初めて笑ったと、涙を流していた。
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