第5章

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けれども、鈴村さんの突き刺さるような悲しげな声を聞いてしまった今、とても手放しで喜べない。 もちろん泣いている鈴村さんがかわいそう、と思う気持ちもある。 でもそれ以上に私の心の中にあるのは――、 私も振られてしまうかもしれない…という、恐怖感にも似た感情だった。 ずっとずっと前から加瀬くんのことが好きで、 いつか思いを伝えて、両思いになることを夢見ていたけれど……、 私はいつの間にか、忘れてしまっていた。 告白しても、必ず上手くいくわけじゃない、てことを……。 「…ぐすっ…うっ…」 鈴村さんは、まだ泣き止む様子がない。 先生が居なくなるまでずっと、泣くことも我慢してたのかも…と思うと、胸が締め付けられるように痛い。 鈴村さんのすすり泣く姿に私は――、 告白して振られて泣いている、遠くない未来の自分の姿を重ねていた。
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