第5章

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次の日、私は電車を降りると駅の構内にあるパン屋に立ち寄った。 以前からたまにこの店のパンが食べたくて、お弁当を持たずに来てパンをお昼用に買っていく、ということを時々していた。 最近は、加瀬くんと会うために電車を降りると真っ直ぐバス停へ向かっていたので、 朝、この店に寄るのは久し振りだ。 私はお昼に自分が食べる分と別に、さつきと食べようとミニクロワッサンも買った。 紙袋から、焼きたてのパンのいい香りが漏れてくる。 「ん…いい匂い……食べたくなっちゃう。」 特に、さつきと食べようと買ったミニクロワッサンは、トレイに並べられたばかりの焼きたてだったので、 まだほんのりと温かく、紙袋の外にもその熱が伝わってくる。 バス停は駅の南口から出ると近いけれど、パン屋は駅の北口付近にあったため、私はパンを買った後、北口から駅の外に出た。 学校へ行くのも南口からが便利なため、北口付近はうちの学校の生徒は滅多に通らない。 通るとすれば、北口方面から来る自転車通学の生徒くらいである。 ……そう言えばあの日、どうして加瀬くんは、ここを通ってたんだろ……。 カップケーキを渡した日、1本早い電車で来て早く着きすぎた私は、遠回りしていこうと、敢えて北口から出た。 そして、偶然早く来ていた加瀬くんに会ったのだ。
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