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……加瀬くんの家、こっち方面なのかな。
でも、加瀬くん…あの日どうして早く来てたんだろ……。
そんな事を考えながら自転車置き場の横を通ってバス停へ向かおうとすると、うちの学校の制服を着た男の子と女の子がこっちに向かって歩いて来るのが見えた。
男の子は自転車を引いているので、女の子の自転車を取りに来たのかな、と思っていた私だったが、
男の子の顔を見たとたん、咄嗟にしゃがみ込んで停めてあった自転車の陰に隠れた。
……う…そ…どういうこと?
その2人は、加瀬くんと鈴村さんだった。
……加瀬くんが、今日早く行かなきゃいけない理由って、
私と一緒にバス停まで行けない理由って、
鈴村さんと会う約束してたからだったんだ……。
ズキンとした痛みが、胸に響く。
『まだ返事してないみたい。』
さつきに聞いた話が頭に浮かんでくる。
……もしかして、告白の返事をするために会ってたのかも……。
加瀬くん、何て答えたのかな……。
カチャ、と鈴村さんが停めてあった自転車のカギを外した。
鈴村さんは両サイドの自転車が倒れないように、そおっと自分の自転車を後ろに動かす。
その時、ハンドルが当たって右側に停めてあった自転車が倒れそうになってしまった。
「あぶなっ……」
加瀬くんが素早く手を伸ばして、それを防ぐ。
「ご、ごめんなさい…ありがとう……」
恥ずかしそうに鈴村さんが、加瀬くんにお礼を言った。
そして――、2人は並んで自転車に乗ると、バス停を通る道とは別の道を走って行ってしまった。
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