第5章

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「か、加瀬くんっ……」 驚いた私の心を読み取ったのか、加瀬くんが言った。 「きのう部室に忘れ物して今取ってきたから、鍵を返しに来たんだ。」 廊下に出ると加瀬くんは、私の持っていたプリントの半分以上を奪ってスタスタと歩き出した。 職員室と私達のクラスの教室は、別棟にある。 2階に上がって渡り廊下を通って行くのが、教室までの1番の近道だ。 それなのに加瀬くんは、渡り廊下を渡らずに更に3階に続く階段を上がって行く。 3階は音楽室などの特別教室ばかりで、普段はあまり用事がなく人も通らない。 ……どうして…こっちから? 不思議に思いながらも加瀬くんの後をついていくと、2階と3階の間の階段の踊場で加瀬くんの足が止まった。 「これって課題のプリントだろ。メチャメチャ多いな。」 「…そう…だね。」 「竹中先生、ほんと課題が多くて参るよな。」 「うん……」 後ろを振り返るようにして話していた加瀬くんは、クルリと向きを変えて私の正面に立つ。 ……わわ、ちょっとそんな突然、困るんだけど……。 私の心臓が、ドクンと大きく跳ね上がった。
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