第7章

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今朝は、いつもよりも丁寧にブローした。 「髪、後ろはねてないかな。」 鏡で最終チェックをしてから家を出る。 今日は加瀬くんと、久し振りに朝会える。 そう思ったら、まるで遠足の前日のようにワクワクしていた私だったが、 電車に乗り駅で降りる頃には、ワクワクはドキドキに変わっていた。 教室では毎日会っていたのに、もう随分長く会っていないような感じがする。 加瀬くんに会ったら、最初に何て言おう。 あ…最初は「おはよう」だけど…その次は…、 「ごめんなさい」だよね。ちゃんと謝らないと…。 それから、メールに返事くれたお礼と、それから……、 「ずっと会いたかった」 思わず心の声が、言葉となって頭に浮かぶ。 ……これは…とても恥ずかしくて言えないから、心の中で言おう……。 私は自分の頭に浮かんだ言葉に、照れて赤くなった。 改札を通り抜けて、南口へ向かう。 チリン。 誰かの自転車のベルの音が、聞こえてくる。 まだ私は駅の構内にいるので、出入口付近で誰かが鳴らしたのが聞こえたのだろう。 いつも私は、南口を出てからバス停に向かって少し歩いた所で、加瀬くんと出会っていた。 私が先に気付いた時は、立ち止まって後ろを向きながら、加瀬くんがそこまで来るのを待つ。 それで、加瀬くんが先に気付いた時は、後ろからチリンと自転車のベルを鳴らして、その音を合図に私が立ち止まって振り返る。 今日は…どっちのパターンかな…。 そんな事を考えながら南口を通り抜けると、駅を出てすぐの所に加瀬くんが立っていた。 *
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