36人が本棚に入れています
本棚に追加
今朝は、いつもよりも丁寧にブローした。
「髪、後ろはねてないかな。」
鏡で最終チェックをしてから家を出る。
今日は加瀬くんと、久し振りに朝会える。
そう思ったら、まるで遠足の前日のようにワクワクしていた私だったが、
電車に乗り駅で降りる頃には、ワクワクはドキドキに変わっていた。
教室では毎日会っていたのに、もう随分長く会っていないような感じがする。
加瀬くんに会ったら、最初に何て言おう。
あ…最初は「おはよう」だけど…その次は…、
「ごめんなさい」だよね。ちゃんと謝らないと…。
それから、メールに返事くれたお礼と、それから……、
「ずっと会いたかった」
思わず心の声が、言葉となって頭に浮かぶ。
……これは…とても恥ずかしくて言えないから、心の中で言おう……。
私は自分の頭に浮かんだ言葉に、照れて赤くなった。
改札を通り抜けて、南口へ向かう。
チリン。
誰かの自転車のベルの音が、聞こえてくる。
まだ私は駅の構内にいるので、出入口付近で誰かが鳴らしたのが聞こえたのだろう。
いつも私は、南口を出てからバス停に向かって少し歩いた所で、加瀬くんと出会っていた。
私が先に気付いた時は、立ち止まって後ろを向きながら、加瀬くんがそこまで来るのを待つ。
それで、加瀬くんが先に気付いた時は、後ろからチリンと自転車のベルを鳴らして、その音を合図に私が立ち止まって振り返る。
今日は…どっちのパターンかな…。
そんな事を考えながら南口を通り抜けると、駅を出てすぐの所に加瀬くんが立っていた。
*
最初のコメントを投稿しよう!