第7章

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…え、加瀬くん…? いつもは私の方が先に駅に着いていて、バス停へ向かう途中で後ろから加瀬くんが通りかかる。というのが、今までのパターンだ。 それなのに今日加瀬くんは、自転車から降りて駅の南口に立って待っている。 私が近づくと、加瀬くんはもう一度チリンと自転車のベルを鳴らして言った。 「聞こえた?」 「…あ…うん…」 どうして?と言わんばかりの顔をしている私に、加瀬くんは鼻の頭をぽり、と掻いた。 「ごめん。」 「え…」 …どうして加瀬くんが謝るの? 謝るのは私の方なのに…。 不意をつかれた言葉に、さっきまで考えていた事は、全部ふっ飛んでしまった。 ボーっと立ち尽くす私に、加瀬くんは更に追い討ちをかける。 「ごめん。いつもの時間に、て言っといて。つい、早く来ちゃってさ。」 「…っ…」 「こっちで待ってた方が早く会えるかな、て思ったんだけど……驚かせちゃった、な。」 「……」 加…瀬くん…分かってるのかな……。 今の…すっごい殺し文句…。 *
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