第8章

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* * * 『アヤカ』 《私の名前を、彼は切なげに呼ぶ。》 『さっきの返事、今じゃなくていいから。』 『え…』 『突然でびっくりしただろ?アヤカと話してたら、気持ちが抑えられなくなって、どうしても気持ち伝えたくなって…』 『……』 『いきなり付き合ってくれなくても、いいんだ。ゆっくり考えてから、返事してくれれば。』 『…でも…』 『俺はずっとアヤカのことを思ってたけど、アヤカにしてみたら、いきなり、だよな。 だから、まずは俺のこと、少しだけ意識してみて。』 『でも、あの…』 『帰ろうか。』 《繋いだ手をそっと離すと、彼はくるりと向きを変えて歩き出した。》 《さっき私は、ドキドキしながらも、差し出された彼の右手を握った。 それで、私の気持ちは伝わったものだと思っていた。 でもそれは、私の思い込みのようだ。 彼は、全く気付いていない。 …私が、こんなにも彼を好きなことを…。 …たまらなく、ドキドキしていることを…。 そして、 繋いだ手が離されたことに、寂しさを感じていることを…》 *
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