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『アヤカ』
《私の名前を、彼は切なげに呼ぶ。》
『さっきの返事、今じゃなくていいから。』
『え…』
『突然でびっくりしただろ?アヤカと話してたら、気持ちが抑えられなくなって、どうしても気持ち伝えたくなって…』
『……』
『いきなり付き合ってくれなくても、いいんだ。ゆっくり考えてから、返事してくれれば。』
『…でも…』
『俺はずっとアヤカのことを思ってたけど、アヤカにしてみたら、いきなり、だよな。
だから、まずは俺のこと、少しだけ意識してみて。』
『でも、あの…』
『帰ろうか。』
《繋いだ手をそっと離すと、彼はくるりと向きを変えて歩き出した。》
《さっき私は、ドキドキしながらも、差し出された彼の右手を握った。
それで、私の気持ちは伝わったものだと思っていた。
でもそれは、私の思い込みのようだ。
彼は、全く気付いていない。
…私が、こんなにも彼を好きなことを…。
…たまらなく、ドキドキしていることを…。
そして、
繋いだ手が離されたことに、寂しさを感じていることを…》
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