第8章

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《言葉だけでは、伝わらないこともある。 でも、言葉にしなければ伝わらないこともある。 私の気持ち、もっとしっかりと彼に伝えたい。 私は、一度歩き始めた足を止めた。 それに気付いた彼も、足を止めて、顔だけ振り返る。》 『…今、返事しても、いい?』 『アヤカ…』 『…私…今すぐ伝えたい。』 《彼は瞳を揺らめかせながらその奥に動揺を隠すと、覚悟を決めたように、ゆっくりと振り向いた。》 * * * 「……」 パタンと携帯を閉じた私の中で、アヤカの心の声が響いている。 《言葉だけでは、伝わらないこともある。 でも、言葉にしなければ伝わらないこともある》 今朝バス停で、いつも乗るバスを見送って、加瀬くんが来るのを待っていたこと。 私なりに、気持ちをアピールしたつもりだった。 でも、こんな事くらいでは、加瀬くんは気付いていないのかもしれない。 …ねえ、加瀬くん。 今日のこと、どう思った…。 少しは私の気持ちに、気付いてくれた? * *恋助さんの小説、前回は94、95ページです。
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