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《言葉だけでは、伝わらないこともある。
でも、言葉にしなければ伝わらないこともある。
私の気持ち、もっとしっかりと彼に伝えたい。
私は、一度歩き始めた足を止めた。
それに気付いた彼も、足を止めて、顔だけ振り返る。》
『…今、返事しても、いい?』
『アヤカ…』
『…私…今すぐ伝えたい。』
《彼は瞳を揺らめかせながらその奥に動揺を隠すと、覚悟を決めたように、ゆっくりと振り向いた。》
* * *
「……」
パタンと携帯を閉じた私の中で、アヤカの心の声が響いている。
《言葉だけでは、伝わらないこともある。
でも、言葉にしなければ伝わらないこともある》
今朝バス停で、いつも乗るバスを見送って、加瀬くんが来るのを待っていたこと。
私なりに、気持ちをアピールしたつもりだった。
でも、こんな事くらいでは、加瀬くんは気付いていないのかもしれない。
…ねえ、加瀬くん。
今日のこと、どう思った…。
少しは私の気持ちに、気付いてくれた?
*
*恋助さんの小説、前回は94、95ページです。
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