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「…加瀬…く…ん…」
近すぎる距離に、肩に置かれた手、それに、
「…広崎…」
いつもより熱っぽい瞳によって向けられる視線は、目を閉じていても息苦しいくらい私の胸を締め付る。
加瀬くんの指先がゆっくりと伸びてきて、私の前髪をかき分けた。
「…広崎…」
加瀬くんが言葉を発した時に漏れた息が、わたしの前髪にかかり、おでこをくすぐる。
「…広崎、これは…夢じゃないから…」
震える指先の両手を口元で合わせて、いまだに目を瞑ったままの私のおでこに、柔らかなものが触れた。
その瞬間、私の全身に、ビリビリと電流が流れるような衝撃が走る。
そしてその感覚は、初めてではない……と気付く。
…私…前にも加瀬くんに…、
キス…されたんだ…。
すっぽりと抜けていた記憶が、おでこに落とされた加瀬くんのキスによって、深い深いところから呼び起こされた。
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