第9章

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夕方になって少し暑さが和らいできたが、日なたにあるベンチには日差しが当たり、その上まだ昼間の熱が残っている。 日陰のベンチに座って日差しを避けた私は、ドキドキと高鳴る胸に、そっと手を当てた。 今朝加瀬くんは、怒ったような顔をしていたのに、突然照れた顔をしたと思ったら、私のことをおっちょこちょいだと言って、笑った。 何がなんだか、さっぱり分からなかった。 それに、加瀬くんが言ったあの言葉。 『また…すれ違うところだった。』 話が噛み合ってないというのは、おそらく私が忘れていた記憶の話。 抜けていた夢の一部分は、加瀬くんと私をすれ違わせてしまうほど、大きな意味を持っているのだろうか。 加瀬くんに「好き」と言ってしまったのでは?というのが、私の思い込みだとするならば、 あの日、あの後、一体何があったのだろう…。 …加瀬くんは、ここに私を呼び出して、いったい何を伝えようとしているのだろう…。 険悪なムードでの約束ではなかったので、そんなに恐がる必要はないのだろうけど、 今日で、加瀬くんと私の何かが変わってしまいそうで、私は落ち着くことが出来なかった。 *
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