第9章

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ジャリ、と砂を踏むような音が聞こえた方に顔を向けると、 とっくに私を見つけた加瀬くんが、自転車を引いてベンチに近づいてきた。 ベンチの脇に自転車を停めると、加瀬くんは私の隣りに少し間をあけて座った。 「あーあ。負けちゃったか。」 「え…何が…」 「広崎より先に来て、待ってようと思ったのに。長谷部が呼び止めるから…」 「……」 本当に悔しそうにする加瀬くんが可笑しくて、私はクス、と笑った。 …結構、負けず嫌いなんだ。加瀬くん…。 また彼の新しい一面が知れたのが嬉しくて、顔を緩ませたままの私を見て、 「…そんな…笑うなよ。」 加瀬くんは、ちょっとふてくされた様に、そっぽを向いた。 一緒に毎朝バス停までの道を歩くようになってから、加瀬くんと2人きりのこの状況には、ほんの少し免疫ができてきた。 それにベンチに横並びに座っているので、私のフリーズ具合もかなり軽減されている。 ふてくされた加瀬くんが可笑しくて、少し緊張がほぐれた私は、昼間気になった事を聞いてみた。 「…あの…加瀬くん、」 「何?」 「加瀬くんて、嫌いな野菜ある?」 「…は?どうしたの、突然。」 「トマトとタマネギとコーンの中で、嫌いなものある?」 *
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