第9章

16/23

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
でも時々、たまにだけれど、加瀬くんが全然見当違いの解釈をしていることがある。 そんな時私は、慌てて加瀬くんの解釈を訂正する。 「違うの。私が思ってるのは、そうじゃなくて…」みたいに。 何故かそういう時は、意識が加瀬くんの言葉に集中しているせいか、フリーズしていた筈なのに、自然に声を発することが出来るのだ。 不思議。 加瀬くんといると、フリーズしていてカチカチに固まっていた私が、いつの間にか溶かされている。 それは多分、 加瀬くんの陽だまりのような暖かさと、 加瀬くんを好きだという、私の心の熱が、 フリーズした私を溶かしているのだ。 スッ、と加瀬くんの手が伸びてきて、私の髪に触れた。 顔にかかる髪を軽くかきあげて、私の顔を覗き込んだ加瀬くんは、ホッとしたように言った。 「良かった…ボールが当たった跡、もう治ってるな。」 「…うん。もう大丈夫。」 加瀬くんの指が頬に当たり、ドキリとする。 恥ずかしさから俯くと、加瀬くんの手が引っ込められた。 *
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加