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「あの日さ…」
ぽつりと加瀬くんが、話し始めた。
「保健室に戻ってきて、もうすぐ先生が来ることを伝えたら、広崎が俺が突き指してるかを気にしてくれてて…」
「うん…」
「俺は大丈夫だよ、て答えたら、そこから広崎の返事がなくなって…たぶんそのあたりで、寝ちゃったんだと思うんだ。」
「うん…ごめんなさい。話の途中で、寝たりして…」
小さく俯いて謝ると、
「謝らなくて、いいって。」
加瀬くんは、フワリと微笑みながら言った。
「…でさ…その後のことなんだけど…、
広崎が思い出したの、て何?」
「はっきりと思い出した訳じゃないの…ただ…もしかして、て思うことがあって…」
「…それは、広崎のこと?」
「…え…」
「広崎が見た夢の内容とか、寝言で言った言葉とかだけ?」
「…うん…」
「…俺の事は、何も思い出してないの?」
「え…」
「俺が言った言葉とか…記憶にない?」
……加瀬くんの、言葉?
私は懸命に、記憶を手繰り寄せた。
「…夢なのか現実なのか、分からないけど、加瀬くんに名前を呼ばれたような気がする…」
「うん…」
「内容は分からないけど…夢に加瀬くんが出てきて、それから…」
*
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