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前に電話で話した時に、私の途切れた記憶を、加瀬くんは知っていると言っていたが、
あの時は何故か加瀬くんは、それをすぐに教えようとしなかった。
『続き…知りたい。』
『だけど…その後のことは、教えない。秘密。』
それを今日教えてもらえるんだと思い、私は加瀬くんの方に少し体を向けて言った。
「加瀬くん」
「うん」
「…今日は、教えてくれるの?私が忘れていること…」
「…うん」
「だったら、私、知りたい。」
恥ずかしくて、しっかりと目を合わせられず、ずっと俯いて目線を下に向けていた私は、
ゆっくりと顔を上げて、加瀬くんと視線を交わらせる。
「…思い出させて…」
「…いいよ。」
加瀬くんが、ベンチに座る私との距離を縮めた。
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