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近づいた、といっても加瀬くんと私の間には、適度な距離が保たれている。
それなのに何だか、加瀬くんの熱が私に伝わってくる気がする。
ドク、と心臓が跳ね上がる。
息苦しいくらいの胸の動きを落ち着かせようと、私は再び交わらせた視線を手元に戻そうした。
けれども加瀬くんの言葉によって、逸らしそこなった私の視線は、いつもより熱を帯びた瞳に捉えられてしまった。
「…広崎…目、閉じて。」
「…え…どうし…」
「いいから。」
有無を言わせない、少し強引な言い方で、加瀬くんは更に言葉を重ねる。
「目、閉じて。」
「…あの、でも…」
「いいから。早く。」
加瀬くんに促されて、私はそっと目を瞑った。
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