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「広崎、そのままで俺の話聞いて。あの日の事、想像してみて。」
「うん…。」
言われた通り私は、目を閉じたまま、加瀬くんの言葉に耳を傾ける。
「あの日、俺と話しながら広崎が寝ちゃったから、傍を離れようとしたんだ。」
「うん。」
「そしたら広崎が、『加瀬くん』て俺の名前呼んで。
起きてたのかな、と思って、もう一度広崎の傍に戻ったら…」
「うん。」
「そしたら、目も閉じてやっぱり寝てるみたいだし…。
夢見てるのかな…なんて思ってたら、今度は『良かった』ていう寝言が聞こえてきて。」
恥ずかしくなって、私はパッと目を開けた。
「わ、私、そんなに色々寝言を言ってたの?」
「いや。そんなに色々って訳じゃないよ。広崎…あと少しだけ…目、閉じてて。」
「あ…ごめんなさい。」
加瀬くんに言われて、私はもう一度目を瞑った。
「何の夢見てるのかな、て思ってたら、広崎がもう一度俺の名前呼んで…それで、その少し後に…」
「…あ…」
…私…加瀬くんに…。
目を閉じて加瀬くんの声を聞いていたら、同じ状況のせいなのか、
突然、ずっと思い出せなかったあの日の記憶が、次第に蘇ってきた。
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