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駅に着いて、バス停までの道に向かって歩き始める。
後ろから、もう聞き慣れた自転車のベルを鳴らす音が聞こえ、どき、と心臓が跳ね上がった。
振り向くと、自転車に乗った加瀬くんが、すぐ後ろまで来ていた。
「おはよ。」
「…おはよう。」
挨拶を交わす時にフワリと微笑まれ、私はホッと胸をなで下ろす。
…よかった。避けられてはないみたい…。
様子を窺うように、チラッと加瀬くんの方を見ると、
ほんの少し後ろを歩く私を気にして振り返る加瀬くんと、バチッと目が合った。
お互いに、ぱっと目を逸らす。
「……」
「……」
…今の、すっごく不自然だったよね。
私だけじゃなくて、加瀬くんも…。
避けられてはいないけれど、加瀬くんの態度がどこかいつもと違う。
「…久し振りだな。一緒に行くの。」
「…うん。」
会話も、ぎこちない。
しばらく沈黙が続いて、加瀬くんが立ち止まった。
ドクン。
胸を打つ音が、大きくなる。
加瀬くんは振り返ると、ためらいがちに私に聞いた。
*
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